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1983年は、家族愛を扱った秀作が揃いました。
父親失格の男が、別れた妻の元にいる子供達との仲を取り戻そうと
奮闘する「5人のテーブル」。
両親に捨てられ、兄が育てた弟や妹と別れ別れになり、
弟と妹を必死で探す兄の姿を描いた「ロングウェイホーム」。
日本映画でも、非行に走る娘を更正させる両親の涙ぐましい努力を
描いた「積木くづし」が、話題を呼びました。
その中でも「愛の7日間」は、一番の傑作だと思います。
夫が亡き愛人の子供に出会い、
その子との愛情を育む姿を描いているだけではありません。
子供を家庭に招き入れる事によって、夫婦愛に亀裂が生じ、
家庭を守るために妻と夫が葛藤する姿を、明確に打ち出しています。
更に、夫・妻・その子供・夫の子供の言い分を、
ハッキリと表現する事により、傑作になりました。
マーティン・シーン演じる大学教授の夫は、10年前にフランスで、
独立心の強い女医と、1度だけの不倫の恋に陥ります。
しかし、子供が出来ている事は知らずに、ブライス・ダナー演じる
出版編集者の妻や2人の娘と、平穏な10年間を過ごします。
しかし愛人が死亡し、その子供を預かっていると、友人から電話を
受けた夫は驚き、その子に無性に会いたくなり、妻と相談します。
夫がフランスへ行く事に懸念を感じた妻は、イースターの休みに、
その子を、自分達の家庭へ招き入れる事にします。
その子に、父の友人だと偽って接待する夫ですが、野球やサッカー
を教えるうち、自分の子供であるという気持ちが高ぶってきます。
娘しかいない父親にとって、息子の存在は嬉しくなるものです。
夫が、娘達よりその子に愛情を注いでいる事は、
周囲から見ても明白に判るほどでした。
そんな夫の姿を見て、不満を爆発させる妻と、夫の会話です。
妻:あなたが今一番大切にしているのは、自分とあの子の事だけよ。
夫:あの子が来て以来、君の心配は、それだけだ。
世間にバレたらどうしようと、びくついてばかりいる。
妻:そう。その通りよ。認めるわ。私は生きた心地もしないわよ。
夫:そんな心配はいらないよ。
妻:どこがいけないの。私は、悲しくて、腹が立って。
怒るのは当然でしょう。人に嘘を付いて、焼きもちを焼かして。
嫉妬もするわよ。あの子を見るあなたの目は、娘達を見る時と、
まるで違うわ。私に対しても同じよ。
夫:もうよせ。いい加減にしろ。
妻:一度も聞いてくれなかったわ。何とかなるかいって。
何時、私の辛い気持ちを慰めてくれたの。
夫:でも、連れて来いと言ったのは君じゃないか。
妻:そうよ。でもそれは頭で考えた事で、気持ちの方は
違ってたのよ。本当の気持ちは、別な所にあったのよ。
夫:分かったよ。おれが今まで抱いていた夢が、
すべて破れたという訳だ。これからどうすりゃいいんだ。
妻:これで良かったのかも知れない。周りじゃ私達は、人も羨む
理想の夫婦だと見てたのに、その実、世間並もいいところ。
愛情が残っていれば、ゼロからやり直すんでしょうね。
夫:私達はあくまで夫婦だ。今更別れるつもりは無いよ。
二人の間に何かあっても、子供に関わりは無いし、
あの子は第三者だ。ただ、あの子は俺が死ぬまで俺の息子で、
俺はあの子の父親なんだ。
妻:ずっと手元に置きたいのね。あの子と一緒にいたい。
それが望みなんでしょ。
夫:そうだ。そうしたい。引き止めたい。
妻:私には、受け入れる自信が無いわ。
夫:その気持ちは判る。でも残りは後1週間の事なんだ。
後わずかじゃないか。優しくしてやってくれ。頼む。
妻:私には、あなたが必要なのよ。愛しているんですもの。
私、あなた無しには...。
そう言って、二人は抱き合います。
自分が父親である事が分かった時の、はにかみながらも嬉しそうに
微笑む息子の表情。それとは裏腹に、娘達にバレた時の、
ショックで傷つき、泣き叫ぶしかない娘達の可哀想な表情。
7日間が過ぎて、気持ちが落ち着き、空港で妻や娘達と
別れの挨拶をした息子は、父親と別れの抱擁をします。
別れがたく、万感の想いで抱き合う父と息子のシーンが、
目頭を熱くさせます。何度も繰り返し見たくなるシーンなので、
DVD化が、待ち望まれます。
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