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日本映画に天使が登場する事は、極めて稀です。
私も、この映画で初めて見ました。
日本には、輪廻転生の考え方はありますが、天使は登場しません。
欧米では、輪廻転生の考え方は浸透していませんが、生前の行いに
よって、死んだら天国か地獄のどちらかに振り分けられる事は、
「ゴースト~ニューヨークの幻」(1990)に描かれている通り、
浸透しています。そして、天国と天国からの使いとしての天使は、
欧米の映画では古くから登場しています。
「素晴らしき哉、人生」(1946)、「幽霊紐育を歩く」(1941)と
そのリメイク「天国から来たチャンピオン」(1978)が有名ですが、
他にも「ワン・モア・タイム」(1989)、「オールウェイズ」
(1989)を始め、枚挙に暇がありません。
中でも、「ベルリン~天使の詩」(1987)のリメイクである
「シティ・オブ・エンジェル」(1998)は、
上質のラブストーリーになっていると思います。
天使が登場する事がよくあるアメリカ映画でも、
「ワン・モア・タイム」、「オールウェイズ」、と1989年に
立て続けに登場し、翌年に幽霊が主人公のラブストーリー
「ゴースト~ニューヨークの幻」が大ヒットした事が、
この映画「エンジェル~僕の歌は君の歌」の制作に
踏み切らせたのではないかと、推測出来ます。
恋人を死から救おうとするプロットは、「ゴースト~」と
似ていますし、天使が人間に恋をする部分は、
「シティ・オブ・エンジェル」のようです。
恋人は、織田裕二と和久井映見が演じています。
前年の「就職戦線異常なし」に続いてのコンビであり、
二人は、フジテレビを中心としたドラマでも主演し始め、
上昇気流に乗っている頃なので、活き活きと演じています。
恋愛・結婚に関して曖昧な態度をとり続ける織田裕二に、嫌気が
差した和久井映見は、医者とお見合い結婚する事を決めます。
大地真央演じる天使は、死者の魂を無事天国へ届ける使命を
負っていますが、慌てて落とした魂のひとつを織田裕二が拾い、
大地真央は、織田裕二を見習い天使と勘違いしてしまいます。
天使仲間として、全てを打ち明けてしまったのです。
天使の存在と使命を知った織田裕二は、大地真央がいない隙を
狙って、これから天国へ行く人間のリストを覗き見してビックリ。
なんと、7月7日午前7時に、
和久井映見が心臓発作で死ぬ事が書かれてありました。
それからの織田裕二は、猪突猛進。大地真央に和久井映見を助ける
方法を聞き出そうと、悪戦苦闘しますが、人間の感情を持たない
天使の大地真央は首を横に振るばかり。
祈祷師に40万円払ったり、出来る事は何でもやるという始末です。
この猪突猛進型の織田裕二が、役にピッタリであり、その後の彼の
俳優としてのキャリアのベースになったと思います。
そんな織田裕二の姿を見ている内に、人間の感情を持たないはずの
大地真央が、織田裕二に恋らしきものを感じ始めてしまいました。
人間の感情を知らなかったのですから、その恋心にどう対処して
いいか分からず、途方に暮れてしまいます。
そんな時、先輩の元天使が、絶妙なアドバイスをしてくれます。
織田裕二を完全無視し、医者との結婚に邁進する和久井映見ですが、
突然、心臓発作で倒れてしまいます。病床にいる間中、
看病している織田裕二を見て、心を動かされる和久井映見。
その時に織田裕二が言った言葉は、映画を見てのお楽しみとします。
やがて和久井映見の寿命が尽きる時がやってきます。その時、
和久井映見が織田裕二に言う言葉が、織田裕二が言った言葉に
対する答えになっています。
その時、二人の前に現れる大地真央。来るな死神と罵る織田裕二に、
大地真央は、予想もしなかった方法で、和久井映見を助ける事が
出来ると織田裕二に告げます。二人の、そして大地真央の結末は。
映画を見てのお楽しみとします。
あなたなら、この結末を受け入れるでしょうか。
エルトン・ジョンの「僕の歌は君の歌」が全編に流れ、心に沁みる
ファンタジック・ラブストーリーに出来上がっています。
しかし、日本テレビが制作したこの映画は、フジテレビが当時制作
していた軽薄なラブストーリーのようにはヒットしませんでした。
日本の映画興行成績が、邦画優勢に転じたのは、「誘拐」のページ
で書いた通り、織田裕二主演の「踊る大捜査線 ザ・ムービー」
(フジテレビ制作)の大ヒットの影響が大きいです。
しかし、2003年の「黄泉がえり」の予想外の大ヒットや、
翌2004年の「いま、会いに行きます」の連続大ヒットによって、
ファンタジック・ラブストーリーのブームを作ったTBSの存在が、
邦画優勢に転じるもうひとつの起爆剤になりました。
現在の邦画は、ファンタジック・ラブストーリーが沢山作られ、
天使が出てくる映画もあります。「椿山課長の七日間」(2006)では、
和久井映見が天使を演じています。題名もズバリ「天使」(2006)
という深田恭子主演映画もあります。
この映画「エンジェル~僕の歌は君の歌」を観客が受け入れるには、
制作・公開した時代が早すぎたようです。
今こそDVD化して、見て欲しい作品です。
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