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映画「黄金の指」は、東京では、1973年12月に
ロードショー公開されましたが、地方では遅れて公開されました。
当時は、東京でのロードショー公開の興行成績次第で、
地方での公開時期・方法を決めるのが、当たり前でした。
私が、高校まで住んでいた地方都市では、
一年遅れの1974年12月に、2本立てで、
「007/黄金銃を持つ男」の併映作品として公開されました。
同じユナイト作品なので、黄金2本立てと、宣伝していました。
1年遅れで地方公開されるほど、興行成績は芳しくなく、
従って、ビデオもDVDも発売されていません。
しかし、地上波では、月曜ロードショーを始め、
何度も放映されているので、見た方も多いでしょう。
何気なく見ている内に、その面白さにハマるタイプの映画です。
シネスコの横長画面の左右の半分弱をトリミングした4:3の
画角のテレビ画面では、登場人物が、右端か左端に居て、
半分切れているのが、気に成ります。
日本映画のテレビ放映時に、このような4:3のトリミングが
多く、テレビ局がトリミングに労力をかけていない事が判ります。
アメリカ映画の場合は、本国のテレビ放映時に、
登場人物の動きに合わせてトリミングの位置を移動させるという、
労力を使ったトリミングを行っているので、
そのバージョンを日本のテレビ局が使う事が多かったのですが、
この映画は、アメリカ放映版が、入手出来なかったのでしょう。
特殊な業界の手口を公開する映画は、伊丹十三監督の
~の女シリーズを始めとして、日本映画にも多いですが、いずれも
体制側から描いています。反体制側の犯罪グループで、
しかも見た目が地味なスリを題材にした所が、極めて異色です。
個人のスリ映画では、フランス映画「スリ」(1960)があり、
スリのテクニックを映像表現で見事に見せています。
「黄金の指」では、4人のグループが、それぞれ役割を分担し、
スポーツのチームプレーのように息の合った行動をする事で、
スリの手口を見せています。
1980年代に、実際にアメリカでスリにあった日本のアイドルが、
本当にチームプレーで、見事な仕事をしていた。と、
財布をスられたショックも忘れ、感心していました。
この4人の役割分担と、配役が絶妙です。現役を引退した老人
(ウォルター・ピジョン)は、カモを見分ける役割です。
若く色っぽい紅一点の女性(トリッシュ・バン・ディーバー)は、
カモにぶつかり、気を逸らせるオトリ役です。そして、
現役バリバリのリーダー(ジェームズ・コバーン)が、
カモからスリを行う鉄砲役です。最後に、若手の見習い男性
(マイケル・サラザン)が、鉄砲がスッた財布を運ぶサクラ役です。
この、老人・現役・若手・紅一点のアンサンブルが良い事は
月曜ロードショーの解説の荻昌宏さんも、指摘していました。
チームで行動する映画では、登場人物のキャラクター設定が、
明確に描かれている事が、映画を面白くさせる秘訣ですが、
この映画は、実に明確です。人間の内面の心境の変化を細かく描く
日本映画や、キャラクターが薄っぺらな最近のアメリカ映画とは、
違います。多少、ステレオタイプに見えても、明確なキャラクター
設定の面白い娯楽映画が、最近少なくなっているのが、残念です。
更に、最近のアメリカ映画が面白くなくなっているのは、
反体制側の人間を主人公にした娯楽映画が、ほとんど見当たらない
のも、原因の一つでしょう。実際の犯罪が、銃乱射やテロといった
危険極まりない犯罪ばかりなので、反体制側の人間を主人公には
出来ないのでしょうが、その事が、映画のストーリーの幅を
狭めている気がします。この映画を含め、1960~70年代には、
反体制側の人間を、魅力的な主人公にした映画が、沢山ありました。
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