|
1972年に南アフリカ共和国が製作したこの映画は、元占領国である
イギリスの協力を得て、アメリカのコロムビア映画として
配給されました。日本でも、1975年に公開されています。
しかし、私は1986年に劇場で見ました。当時買ったパンフレットに
1986年1月発行と書いてあります。リバイバル公開された時ですが、
当時は、1975年に初公開されているとは知りませんでした。
1970年代前半までは、過去に人気を博した作品のリバイバル公開は、
当たり前のように行われていました。テレビのゴールデンタイムで、
人気作品が繰り返し放映されるようになると、リバイバル公開
される作品は、大型スクリーンに映える大作映画が中心になり、
それは1980年代前半まで続きました。
ビデオデッキとレンタルビデオが急速に普及した1980年代後半から、
リバイバル公開は滅多に行われなくなりました。
この映画は、リバイバル公開システム末期の頃に公開されました。
多分テレビ放映で好評を博し、リバイバル公開されたと推測します。
1977年には、「マイウェイ2」という続編も劇場公開されましたが、
二番煎じの内容であり、リバイバル公開はされませんでした。
リバイバル公開は、オリジナルネガからニュープリントした
フィルムで行われます。使い古したフィルムを使用した再上映とは
異なり、鮮明な画像が甦ります。
この映画でも、南アフリカ共和国でオールロケーションした、
美しい自然が、綺麗に再現されています。
なお、2011年に同名邦題タイトルの映画「マイウェイ 12000キロの
真実」という韓国映画が公開されていますが、全く別の映画です。
この映画「マイウェイ」(1975)の原題は、「The Winners」ですが、
フランク・シナトラが歌ってスタンダード・ナンバーとなった名曲
「マイウェイ」をモチーフにしているため、リバイバル公開時には、
日本での原題が「My Way」に変更されています。
主人公の頑固親父は、30年前のオリンピックで、金メダルを獲得
したマラソンランナーであり、一介の労働者から建設会社の社長に
まで上り詰めた男です。彼の辞書に敗北という言葉は無く、
スポーツをしている3人の息子や一人娘にも、勝つ事のみを
要求します。当然、息子達は頑固親父に反発します。
1986年当時は、反発する息子達に感情移入して見ていたので、
ラストのマラソンにおいて、息子を助ける親父の姿だけで、
親子の和解を描くのは、エンディングとして甘いと思いました。
しかし、頑固親父の年齢に達した今見直すと、金メダルという
過去の栄光に恥じない生き方を追求する親父の考え方も、
客観的に理解出来るようになりました。
勝つ事を強要されたレース・ドライバーの長男は、
八百長をした挙句、レース中の事故で下半身付随になります。
次男は、独立するため、会社からも家からも去って行きます。
後継者と見込んでいた三男は、建設現場のエレベーターの事故で
死亡します。一人娘は、水泳の選手権で優勝出来ず、それを責めた
父親に我慢出来なくなった母親が、娘と共に家を出ると宣言します。
一人ぼっちになった父親は、自身が主催するマラソンに参加する
事を決め、練習に打ち込みますが、寄る年波には勝てません。
打ち拉がれた父親と、母親の会話です。
父親:もうおしまいだ。お前の言う通り、私は老人になった。
戦って、人を傷つけた。その報いだ。
スポーツは、私や息子まで破滅させた。
母親:あなたは何度も勝利を味わった。
父親:最後はこれか。何が残った。
貧乏のどん底から這い上がって最高の座に就く事が出来た。
人間の持てるあらゆる望みは果たした。だが何だ。
何にも無い。疲れきった肉体と、僅かな思い出しか残らない
とは、神様も皮肉な事をなさるものだ。
母親:英雄になれば誰からも讃えられるわ。皆の心に生き続けるの。
あなたは、父であり、夫であるだけでいいのよ。
父親:夫か。神様は私に一番酷い悪戯をなされた。お前をずっと
愛して来たんだ。傍から離したくなかった。出来なくなった。
突然、私の身体はお前を抱こうとしても、駄目になったんだ。
愛していても、身体が言う事を聞かないんだ。
母親:何故、黙っていたの。
父親:言えなかったんだ。
母親:ウィル・マドックス(父親)は、まだ生きてるわ。
終わりじゃないわ。何も心配ないわ。
終わりじゃない事を自身の心に納得させるため、父親はマラソンに
参加します。レース前、次男の姿を見た父親は、短距離選手である
次男に、マラソンのペース配分を教えながら、一緒に走ります。
ついに力尽きた父親が倒れ、次男は優勝を果たします。
何度も倒れ、フラフラになりながらも、最後まで完走する父親の
シーンに、名曲「マイウェイ」が流れます。
「信じたこの道を私は行くだけ、すべては心の決めたままに。」
と言う歌詞と、父親の思いが重なる、感動のクライマックスです。
そこには、自分の生き方を子供に押し付ける頑固親父の姿は無く、
フラフラになりながら走る姿を子供に見せ、決めるのは子供自身だ
と言っている父親の姿がありました。
若い頃この映画を見た人に、中年になった今、是非見直して欲しい
映画であり、鮮明な画像でDVD化して欲しい作品です。
管理人への御意見・御要望は、を
クリックして下さい。
有料メルマガは廃止し、無料メルマガとして、2017年10月14日より、
新たに配信スタートします。下のボタンをクリックすれば、
まぐまぐの個別ページに移動し、無料メルマガ登録が出来ます。
へ
|
|