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落合恵子が書いたエッセイ集「スプーン一杯の幸せ」シリーズは、
1973~76年にかけて、6冊も発売されたベストセラーです。
しかし、エッセイを映画化する事は不可能なので、映画は、
タイトルとモチーフだけを借りた、オリジナルストーリーです。
1960年代は、吉永小百合を中心とした文芸作品の映画化と、
人気歌手のヒット曲をタイトルとモチーフにして、
その人気歌手をゲスト出演させる歌謡映画が、
1970年代以降のアイドルの原型を作りました。
1970年代に、文芸作品の流れを引き継いだアイドル映画が、
百恵・友和のゴールデンコンビを中心とした山口百恵主演作です。
その第一作は、1975年の正月映画「伊豆の踊子」です。
東宝が、大ヒットした「日本沈没」(1974正月)、
「ノストラダムスの大予言」(1974夏)に続いて、
SF大作の「エスパイ」を公開しましたが、
その時の同時上映作品が「伊豆の踊子」でした。
「エスパイ」は予想に反して不評でしたが、
「伊豆の踊子」が予想外に好評だったため、
2本立てとしては、ヒット番組になりました。
当時、山口百恵とアイドル人気を二分していた桜田淳子陣営では、
「伊豆の踊子」のヒットを、映画初主演作を作る絶好の
タイミングと捉えました。東宝のライバル会社である松竹と
共同制作し、山口百恵の主演第二作「潮騒」と同じく、
1975年のゴールデンウィークに公開したのが、
本作「スプーン一杯の幸せ」です。
しかも、山口百恵主演作とは対極の位置にある1960年代
歌謡映画の流れを汲む内容になっています。
人気歌手をゲスト出演させる部分が、アイドル歌手を主演に
するように変更していますが、大ヒット曲「ひとり歩き」が、
メインタイトル・エンドタイトル・劇中歌と、3回も流れる点、
その歌詞の内容を、映画のストーリーの中心としている点は、
正しく歌謡映画です。コミカルな前半のストーリーも、
歌謡映画の流れを汲んでいる部分であり、歌謡映画が、
アイドル映画に成熟していく過渡期の作品です。
桜田淳子演じる高校生が、黒沢年男演じる先生への反発に対し、
その思いが初恋だと気づく後半から、映画はシリアスになります。
若いヒロインの相手役に、年齢の離れた年上の男性を設定するのは、
オードリー・ヘップバーン主演の「昼下がりの情事」(1957)以来の
常套手段です。若いヒロインが、精一杯背伸びして大人っぽく
振る舞う事で、その若さや可愛らしさが引き立つのです。
自らの精神的成長過程を、ファンとともに歩んできたアイドル
桜田淳子にピッタリの役柄です。最近のアイドルには、
大人っぽく振る舞う魅力が、あまり感じられないのが残念です。
「昼下がりの情事」では、その初恋は成就しますが、この映画では
失恋します。失恋の理由は、ストーリーに触れるので書きませんが、
山口百恵が、この映画を見て感動した事がヒントです。
多くの男性ファンに支えらていた桜田淳子のアイドル映画で、
初恋が成就するのは、許されないと桜田淳子陣営は考えました。
しかし、そんな弱腰では、百恵・友和のゴールデンコンビに
敵うはずは無く、GW決戦では興行的に惨敗します。
そのためか、ビデオ化もDVD化もされていません。
しかし、翌1976年作で、同じ広瀬襄監督・岡田奈々主演の
「青春の構図」がDVD化されたので、
その原型とも言えるこの作品も、DVD化して欲しいものです。
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