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障害を乗り越えて愛し合う男女を描いた映画は、
身分違いや白血病をテーマにした「ある愛の詩」(1970)
対立する両家を乗り越え愛し合う「ロミオとジュリエット」(1968)
等、枚挙に暇が無いほど沢山あります。
しかし、愛し合いながらも、自らの意思で別れを決意する映画は、
バーブラ・ストライザンド＆ロバート・レッドフォード主演の
「追憶」(1973)以外、秀作があまり思い浮かびません。
「追憶」は、バーブラ演じる女性の政治的信念と、
惹かれ合う男女間の愛との狭間で葛藤する姿を、
２０年以上に渡って描いた名作でした。
「コンペティション」は、その「追憶」に迫る傑作です。
楽器を演奏する音楽映画は、各楽器を担当する人々のチームワークを
結束し、アンサンブルを重視するというテーマの映画がほとんどです。
アメリカ映画「ミュージック・オブ・ハート」(1999)や、
映画音楽で有名な久石譲が監督した日本映画「カルテット」（2001)、
最近でも「マエストロ」(2015)があります。
コンテストを抜きにすれは、「クロスロード」(1986)のブルース・
ギター、「ラウンド・ミッドナイト」(1986)や「バード」(1988)の
ジャズ・サックス等、ソロ演奏の作品も沢山あり、特に「バード」の
ような伝記映画に、楽器を演奏する音楽映画が多いです。
しかしピアノソロだけは別格であり、大映テレビ「赤い激流」(1977)
「少女に何が起こったか」(1985)を見るまでもなく、
個人競技です。ピアノ演奏のテクニックだけが重視される、
孤独でシビアな競争の世界です。「コンペティション」では、
参加者各人の演奏テクニックの差を、素人にも判るように、
上手く映像と音で表現しています。
リチャード・ドレイファス演じる男性ピアニストは、
ピアノコンクール（コンペティション）の参加資格上限年齢の
３０歳です。父親が病気を押して働き続け、一流ピアニストになる
事だけに、青春を捧げてきました。最後のコンペティションで
優勝出来なかったら、音楽教師になる覚悟で臨みます。
エイミー・アービング演じる女性ピアニストは、幼少の頃から、
ピアノ教師の猛特訓を受け、ピアノ以外の世界を知らない世界で
育ちました。リチャード・ドレイファスとのデートシーンでは、
初めて見る世界の新鮮さに、目を輝かせます。
二人がピアノで連番する現場を見たピアノ教師（リー・レミック）
と、エイミー・アービングとの会話です。
リー：あなたには競争心ってものがないの？普通はライバルに
対して気を許さないようにするものでしょう。相手は敵なの。
コンクールは戦場と同じなんだから。
何時だってそう。肝心な所で駄目になるのよ。
男っけが無きゃ寂しいって言うなら、
あのブロンクスの坊やでも相手にすれば？
いい体してるし、あなたに迫ってたでしょ。
エイミー：ジェリーならいいっていうの？何故？
リー：今のあなたには、SEX相手の男しか必要ないの。
ただの動物としての男なら、裏切った事にはならないわ。
エイミー：どういう事？
リー：不貞を働く気？ピアノに対して。ピアノとあなたは結婚した
のよ。修道女が神の下に嫁ぐのと同じようにね。
ピアノがあなたの夫なの。幸せを与えてくれるのは、決して
男なんかじゃないわ。幸せにしてくれる男なんていない。
ピアニストには、男なんて邪魔になるだけよ。
それがあなたには、何故分からないの？
才能をドブに捨てる気なの？
エイミー：ドブに捨ててなどいないわよ。あなた間違ってるわ。
もし私が彼に冷たくしたら、彼はきっとプレッシャー...
リー：止めて。彼の話なんか聞きたくもない。私も聞かなかったわ。
私達は魅力的で、それに才能もある。
しかもあなたは、これからが勝負よ。
自分より恵まれてない男、そういう男しか現れないわ。
リチャード・ドレイファスに勝つ事を恐れたエイミー・アービング
は、ピアノの練習をサボります。そんな彼女に対し、
リチャード：何故、練習しないんだ。答えろよ。
エイミー：来ないで、あなたなんか知らないわ。
リチャード：止せよ。こんな所で君は何をやってるんだ。
僕は君なんか怖くない。僕なりにやったんだ。
君も変な気兼ねはしないでくれ。分かったかい。
エイミー：分かったわ。あなたに気兼ねなんかしない。
立ち去ろうとしたリチャード・ドレイファスが、彼女の方に戻り、
リチャード：僕は、自分が嘘つきだと言いに来たんだ。
君のいない朝を迎えて、初めてそれに気づいた。
二人の関係の事で、君に嘘をついた。
エイミー：いいから止めて。
リチャード：いいや、止めるもんか。頼むからちゃんと聞いてくれ。
僕は今までずっと待ってた。何時か優勝すれば人生が
変わると。君に会うまでは、それで良かったんだ。
でも君が現れ、そして全てが変わった。
朝、階段の所で話かけてきた君はとても、朝日の中で
輝いていたんだ。完全にノックアウトされたよ。
君がずっと喋り続けている間、僕は君の肌のシミや、
目の下のくまや、手の産毛に目を留めたが。
エイミー：ちょっと。
リチャード：そんな事は問題じゃなかった。僕は君に惚れたからだ。
君の心に入り込み、毛布のように纒いたかった。
今、やっと分かったんだよ。あんなコンクールより、
君の方が大切だって。だから聞いてくれ。いいかい、
僕達二人は、これから力を合わせてやって行こう。
だからもし、君が勝てば喜び、僕が勝てば嬉しい。
もし二人が敗れても、気にせず仲良くやって行く。
もっと早くこういう風に言えれば良かったんだけど、
なかなか素直になれなくて、嘘をついた。
もう嘘はつかない。約束する。絶対だ。
エイミー：私の返事を待ってるの？
と言って、彼にキスをします。
今後のプランについて楽しく話し合い、抱擁する二人。
結末をバラすと、見る楽しみが無くなるので書きません。
エイミー・アービングのコンクールでの演奏の前に、
リチャード・ドレイファスが愛の告白をしたのには、
もっと深い意味があると、結末が判る事によって気づきます。
単なる恋愛映画ではなく、男と女の間の立ちはだかる壁について、
考えさせられる、深い意味を持つ作品です。
中古ビデオが高騰している現在、その意味を伝えるためにも、
是非ＤＶＤ化して欲しい作品です。
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の生命、誰のもの
尊厳死をテーマに、テンポの良いエン タティン メントに仕上げた作品
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