DVDで見れない傑作映画

 ダーティハンター(1974)

「ダーティハンター」は、ベトナム後遺症の影響で、
ゲームとしての人間狩りを楽しむ3人が、
犠牲者の父親に復讐される話です。

管理人:タッキー

最新更新日:
2018年9月25日

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↓パンフレットより
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ベ トナム戦争から帰国した人間が、泥沼化したベトナム戦争の
悪夢に悩まされ、その後遺症から精神に異常を来たす映画は、
1970~80年代にかけて、沢山登場しました。
「タクシー・ドライバー」(1976)は、不眠症のためタクシー運転手
になり、ニューヨークのギャングに殴り込みをかける話でした。

同じロバート・デ・ニーロ主演の群像劇大作
「ディア・ハンター」(1979)。
家族を皆殺しにされ、その復讐をしている姿が、ベトナム戦争を
思い起こさせる「ローリング・サンダー」(1977)。
コマンド部隊のエリートだった主人公が、アメリカでは居場所が
無く、森へ逃げ込んで正規軍と戦う「ランボー」(1981)。

ベトナム戦争を正義の戦いだと思い込み、帰国した後、
精神的な葛藤の末、反戦運動へ傾倒していく主人公を描いた
「7月4日に生まれて」(1990)は、ベトナム後遺症映画を
反戦映画の秀作にまで高めた、集大成の映画だと思います。

そんなベトナム後遺症映画の先駆けとなったのが、
この映画「ダーティハンター」です。
この映画の前は、ベトナム戦争中か、または終了してからの間隔が
短かったので、ベトナム帰還兵の事を考慮したためか、
直接ベトナム戦争を題材にせず、
他の戦争でベトナム戦争を想起させる手法が取られていました。

「ジョニーは戦場へ行った」(1971)は、第一次世界大戦で、五感を
失い、生きた肉の塊となった主人公が、過去を回想する話です。
「ソルジャー・ブルー」(1970)は、奇兵隊がインディアンを虐殺
する映写が、ベトナム人を虐殺する姿に重なり、話題を呼びました。
「M★A★S★H マッシュ」(1970)は、朝鮮戦争を舞台に、戦争よりも
イタズラに精を出す軍医を描いたブラック・コメディでした。
その「マッシュ」を第二次世界大戦に置き換えたように、
狂気の将校や軍医が登場するのが「キャッチ22」(1970)でした。

この映画「ダーティハンター」には、3人のベトナム帰還兵が
登場します。ピーター・フォンダ、ジョン・フィリップ・ロー、
リチャード・リンチが演じる3人は、普段は何の変哲も無い紳士
です。学生時代から仲の良い3人は、社会に出てからも、
レジャーを楽しむ時は、いつも一緒でした。

子供の日(アメリカでは10月31日)には、毎年ピーター・
フォンダの家に集まり、ガーデン・パーティを開いていました。
しかし、翌日には車に銃を積み込んで、毎年狩りに出かけます。
しかも、動物狩りに飽き足らない彼等は、目的地である森に着く
までの2日間に、標的となる人間を物色し、
森に誘って人間狩りの対象にするのでした。

この映画が、他のベトナム後遺症映画と異なるのは、彼等3人が
一見普通の人間に見える点です。頭も良く社交的で、獲物となる
アベックにさりげなく近づき、フランクに話しかけます。
アベックを森まで連れ込む際に、抵抗されないよう演技している
のです。森についても、いきなり人間狩りはしません。
世間話をしながら、不安がるアベックを安心させて行きます。

何故、いきなり人間狩りに突入しないのでしょう。
アベックを安心させておいて、いきなり恐怖のどん底へ引きずり
こむ効果を狙っているのかも知れません。
ベトナム戦争が終わって間もないため、ベトナム帰還兵への影響
を考慮しているのかも知れません。

しかし、私は主演のピーター・フォンダの魅力を、
最大限に引き出すためだと思います。父にヘンリー・フォンダ、
姉にジェーン・フォンダを持つ彼は、父とも姉とも違う、
アメリカン・ニューシネマの代表作「イージー・ライダー」(1969)
で、大スターの仲間入りをしました。

その後も、「さすらいのカウボーイ」(1971)、「ふたり」(1973)、
「ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー」(1974)と、反体制の騎手
としての活躍を続けました。特に、「ふたり」は、ベトナム戦争
からの脱走兵(帰還兵ではない)の苦悩を描いた名作でした。
そのピーター・フォンダが、反体制の騎手から、
人間狩りを楽しむベトナム帰還兵へ役柄を変えるには、
紳士的な振る舞いから、徐々にその本性を剥き出しにする過程を、
じっくり描く必要があるためでしょう。

当時の映画雑誌「スクリーン」でも、ピーター・フォンダの新たな
挑戦として、この映画を取り上げ、同じ頃上映された
「悪魔の追跡」(1975)との比較を行っていました。
キャンピングカーで、郊外をドライブする所までは、この映画と
似ています。悪魔に追跡される一般人と、自らが悪魔のように
人間狩りを楽しむ役を、使い分けるピーター・フォンダを見ながら、
彼の「ダーティハンター」にかける決意が伝わってきました。

この映画は、ベトナム後遺症を声高に叫んでいる訳では無く、
一見、今でいうサイコ・スリラーのような映画に見えてしまいます。
しかし、反体制の騎手として大スターの地位を築いたピーター・
フォンダが演じるからこそ、サイコ・スリラーとは一線を画している
映画に仕上がっていると思います。
人間狩りを楽しむ3人に、ベトナム後遺症の事を語らせなくても、
ピーター・フォンダが、リーダーを演じているだけで、
動物狩りに飽き足らず人間狩りに走る理由が、伝わってきます。

人間狩りが始まってからは、アクション映画の様相を呈します。
詳しくは書きませんが、狩りをする3人に怯えるアベック、
アベックが仲違いし、一人だけで逃げる男の方。
女が絶体絶命に追い込まれた時、狩りをする側に矢が当たり、
一人が死にます。狩りをする側が、
狩りをされる側に逆転する瞬間です。

相手は、3年前に狩りで殺された娘の父親ウィリアム・ホールデン
でした。ウィリアム・ホールデンは、アメリカン・ニューシネマが
流行る前、「戦場にかける橋」(1957)や、「コマンド戦略」(1967)
といった戦争映画のヒーローとして、人気だった大スターです。
「コマンド戦略」は、第二次世界大戦で大活躍したコマンド部隊の
誕生を描いた作品ですが、それがベトナム戦争のグリーン・ベレー
に変わり、その帰還兵に復讐する役に回るとは、皮肉です。

ピーター・フォンダは、母親を自殺に追い込んだ父ヘンリー・
フォンダが、善人ばかりを演じている事を許せず、
不仲になりました。さすがに、ウィリアム・ホールデンの役は、
ヘンリー・フォンダには、オファーしなかったのでしょう。

私は、結論を観客に委ねるタイプの芸術映画が嫌いです。
この映画は、結論こそキチンと描かれていますが、
ピーター・フォンダ側に立って見るか、
ウィリアム・ホールデン側に立って見るかによって、
見方が全く異なる映画になっています。私は、世代的に
ピーター・フォンダ側に肩入れして、見てしまいます。

ビデオ化もDVD化もされていないこの映画こそ、
DVD化して、現代の観客にこの映画がどう映るか、
判断してもらいたい作品です。

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