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今年(2015年)の4月にデビュー35周年を迎えた松田聖子の
アイドル時代の主演映画3本を、紹介します。
「プルメリアの伝説~天国のキッス」(1983)
「夏服のイヴ」(1984)
「カリブ・愛のシンフォニー」(1985)です。
松田聖子の初主演映画「野菊の墓」(1981)は、「Wの悲劇」(1984)
でその才能が開花した澤井信一郎監督の初監督作品であり、
下積み時代の長かった監督の、手堅い演出が発揮された映画でした。
しかし、アイドル映画として最も重要な、松田聖子のアイドルと
しての快活な個性は、生かされていませんでした。
ブームを起こした聖子ちゃんカットを封印し、
額を見せたビジュアルが、当時物議を呼びました。
1970年代のアイドル映画は、1960年代の文芸作品の映画化
の流れを受け継いだ山口百恵主演作品と、同じく1960代の
歌謡映画の流れを受け継いだアイドル映画に大別されました。
(「ス
プーン一杯の幸せ」のページを参照)
共通するのは、若くて未熟なヒロインが、健気に生きていく姿です。
松田聖子の「野菊の墓」も、山口百恵主演の文芸作品の映画化の
流れを汲む作品ですが、1980年代には合わず、アイドル人気
絶頂であるにも関わらず、興業的には振るいませんでした。
山口百恵に代表される良妻賢母型の女性像を1970代型に、
松田聖子に代表される自由奔放に生きる女性像を1980年代型に
なぞらえた本がブームになった事がありました。
それほど、1970代と1980年代では、若い女性の生き方に
変化が現れていました。
アイドル映画でも、桜田淳子が行動的なヒロイン像を模索し、
後期の山口百恵は、等身大の女性像を模索していました。
しかし、1970年代では時代が早過ぎました。桜田淳子は
道半ばでアイドルの座を降り、山口百恵は引退しました。
変わって、角川映画の秘蔵っ子薬師丸ひろ子が、
「翔んだカップル」(1980)、「ねらわれた学園」(1981)、
「セーラー服と機関銃」(1981)と、3本のアイドル映画に主演し、
大ヒットしました。等身大の女の子から、行動的なヒロイン像へ
と成長していく薬師丸ひろ子のアイドル像が、1980年代の
若い女性達の願望を反映し、共感を呼んだ結果です。
山口百恵が引退した年に、同じレコード会社からポスト百恵として
デビューし、桜田淳子の事務所の後輩である松田聖子が、
そんな若い女性の生き方の変化を、見逃すはずはありません。
初主演映画「野菊の墓」の反省を踏まえ、満を持して主演したのが、
「プルメリアの伝説~天国のキッス」です。
この映画の松田聖子は、とにかく活発で行動的です。
ホテル王の御曹司とお見合いして、玉の輿に乗ろうとする序盤から、
初期のヒット曲同様、元気一杯・一直線に進みます。
「このまま結婚していいの。神様、これが本当の愛なんですか。」
と、お見合いに疑問を持ち始める下りは、ユーミンサウンドを
取り入れ、等身大の女の子像を歌ったヒット曲と重なります。
そして中井貴一扮するサーフィン青年と出会うと、すぐに一目惚れ。
松田聖子に好意を持ちながら、なかなか言い出さない中井貴一に、
「誰か私をさらってくれないかな。」とモーションをかけます。
思い立ったら一直線の松田聖子は、ホテル王の御曹司の卑劣な手段
を暴き、中井貴一との恋を育みます。
行動的なヒロイン像を確立した松田聖子の誕生です。
常夏の島ハワイを舞台にした二人のデートシーンには、大ヒット曲
「天国のキッス」が流れ、見ている方も、清々しい気分に浸れます。
80年代のアイドル映画の魅力を満載したこの映画は大ヒットし、
公開年の年間配収で邦画5位になる12億円の成績を上げました。
「夏服のイヴ」や「カリブ・愛のシンフォニー」も、
この映画の大ヒットを受けて制作されました。
「野菊の墓」がDVD化されているのに、この映画がDVD化
されていないのは、アイドル映画のDVD化に積極的な東映と、
消極的な東宝の、映画会社の方針の差と考えられます。
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夏
服のイヴ
後に恋多き女と言われた松田聖子の個性が、早くもスクリーンで開花したアイドル映画
カ
リブ・愛のシンフォニー
共演した神田正輝との愛を育み、実生活でも結婚した松田聖子の最後のアイドル映画
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